トラブル集計各項目の説明

こんにちは代表の熊川と申します。

今回は、私がこれらの業務で経験した病院内で発生した医療機器全体のトラブルの事例と、どのような種類のトラブルが多いのか。どのように対処したらいいのかをご紹介したいと思います。

自己紹介、職務経験と取り扱ったことのある医療機器の種類

少し私の自己紹介をさせて頂きます。

私は合計で約9年間、病院で発生した医療機器のトラブル対応を行ってきました。

医療現場では、様々な医療機器のトラブルが発生します。トラブルが解決されないと、医療機器はその効果を十分に発揮することが出来ず、医療従事者が行う医療行為(治療・予防・診断行為)に大きな影響を及ぼします。

実際の職務経験としては、日本国内の2次病院や大学病院のMEセンターで臨床工学技士として勤務し、臨床現場で発生した医療機器のトラブルを解決するための対応、医療機器の保守点検やメンテナンス(清掃・校正・消耗部品の交換)、医療機器管理計画の立案、医療機器の講習会の実施、医療機器メーカーからの情報収集と医療従事者への情報提供、医療機器の新規購入や廃棄等の業務を行いました。

また、海外の国立病院で、約2年間メディカルエンジニアとして、同様の業務を行ったり、日本国内の医療機器メーカーのサービスエンジニアとして、動物病院や人の病院での医療機器のトラブル対応、医療機器の修理対応、システム構築、保守点検の実施や営業活動を行った経験があります。

取り扱ったことのある医療機器の一部を上げると、生体情報モニター、セントラルモニター、パルスオキシメーター、心電計、血圧計、輸液ポンプ、シリンジポンプ、人工呼吸器、麻酔器、透析装置、分娩監視装置、超音波診断装置、血球計数器、血液ガス分析装置、生化学分析装置、脳波計、筋電計、ポリグラフ、内視鏡、電気メス、酸素濃縮器、AED、除細動装置、無影灯、手術台、高圧蒸気滅菌機、乾熱減菌器等になります。

経験した医療機器のトラブル事例を発生原因で分類

私は、一時期、経験した医療機器のトラブル事例の件数を記録し、集計していました。記録したトラブル事例の件数は約500件程度ですが、記録していないトラブル事例もたくさんあります。

正確な件数は把握していませんが、毎日2件は医療機器のトラブル対応を行っていたので、大まかに1年間365日中、243日間を出勤し業務を行っていたとすると、出勤日243日×9年間×1日2件のトラブル対応=私が経験した医療機器のトラブル件数は4374件程度ということになります。

これらの医療機器のトラブル事例は、その発生原因から大きく3つに分類することが出来ます。

1つ目は、「アクセサリー品や消耗品、消耗部品が原因で発生したトラブル」

2つ目は、「使用者が原因で発生したトラブル」

3つ目は、「医療機器本体が原因で発生したトラブル」になります。

そしてこの3種類のトラブル事例の発生割合を示すと、以下のグラフのようになります。

「アクセサリー品や消耗品、消耗部品が原因で発生したトラブル」が全体の6割、

「使用者が原因で発生したトラブル」が全体の3割

「医療機器本体が原因で発生したトラブル」が全体の1割になります。

「アクセサリー品や消耗品、消耗部品が原因で発生したトラブル」とは何か?

ここからは各トラブルの内容に関して詳細を説明します。まず最初に、アクセサリー品や消耗品、消耗部品とは何かを説明します。

例えばあなたは今、ノートパソコンで書類を作成して、プリンターで印刷したいとします。この一連の作業を完了させるためには以下のような物品が必要になります。

ノートパソコンで書類を作成して、プリンターで印刷する場合に必要な物品ノートパソコン・プリンター・パソコンのアダプター・電源ケーブル・パソコンのバッテリー・パソコンとプリンターを接続するケーブル・プリンターのインク・印刷用紙

これを大まかに分類すると以下のようになります

物品の種類物品の具体例分類
機器本体ノートパソコン・プリンター機器そのもの。
アクセサリー品(付属品)アダプター・電源ケーブル・接続ケーブル機器と合わせて使用する物
消耗部品パソコンのバッテリー機器内部にある定期的な交換が必要な部品
消耗品印刷用紙・インク使ったら無くなる物。単回使用の物

医療機器も同様に、使用するためには、機器本体以外にアクセサリー品、消耗品、消耗部品等の物品が必要になります。

生体情報モニタという、患者の容態を把握するために連続定期に生体情報を測定する医療機器を例にすると、機器を使用する時は以下のような物品が必要になります。

物品の種類          物品の具体例
機器本体生体情報モニタ
アクセサリー品心電図測定用中継ケーブル・心電図測定用のリード線 酸素飽和度測定用中継ケーブル・酸素飽和度測定用のリユースセンサー 血圧測定用のホース・血圧測定用のマンシェット 電源ケーブル・アース線
消耗品部品内部バッテリー
消耗品印刷用紙・心電図電極・樽俎飽和度測定用のディスポセンサー

これらの物品が原因で生じるトラブルの主な原因は以下の通りです。

また、トラブルの対応としては以下のような作業を行うことが多いです。

物品の種類トラブルの主な原因トラブルの対応
アクセサリー品紛失・劣化・消耗・汚れや埃の蓄積物品の清掃と消毒・交換・補充・注文
消耗品部品劣化・消耗
消耗品物品がない

つまり、病院内で発生する医療機器のトラブルの約6割は、このような物品を清掃・交換・補充することで対処することが出来ます。

また、医療機器本体は通常7年~10年程度の耐用年数で設計されることが多いですが、アクセサリー品や消耗部品は定期的な交換を前提としており、メーカーは1年~3年程度に1回の交換を推奨している場合がほとんどです。

従って、これらの物品を定期的に交換せずに使い続けることで、最初にトラブルの原因となることが多く、全体としてトラブルの割合が多くなります。

また、このトラブルは、機器が使用できなくなって初めてトラブルとして医療従事者から相談されるケースが非常に多いのが特徴です。これらの医療機器は機器が使用できなくなるまでの過程で、使用者が気づかないうちに、医療機器の測定精度が低下していたり、治療効果が低下しており、医療機器本来の性能が発揮できていなかったと考えられます。

また、アクセサリー品や消耗部品が劣化している状態で、気づかずに医療機器を使い続けてしまうと、今度は機器内部の故障に繋がります。機器が使用できなくなる前に、定期的に保守点検やメンテナンスを行い、トラブル発生の予兆がある段階で早目に対処を行うことで、トラブルの予防を行うことが出来ます。

そのためには、取扱説明書の内容を要約したり、メーカー講習を受講することで、点検表や消耗部品の交換方法のマニュアル、清掃マニュアルを作成したり、アクセサリー品や消耗部品の交換基準や在庫定位数の決定、補充、保守点検計画の立案と実施を地道に行っていくことが非常に重要です。

また、保守点検は院内で臨床工学技士が行う場合と、メーカーに委託して行う場合があります。専門的な内容を含む定期点検を行う場合には、専用の機材(チェッカーやシュミレータ)が必要となり、院内で保守点検が行えない場合もあります。

しかし、外注が多くなると医療機器の保守点検に要する費用も高くなりますので、重要なのは院内で保守点検を行う医療機器と外注して保守点検を行う医療機器のバランスを見極めることです。また、外注したら数十万円~数百万円かかる保守点検を、院内で行ったことで医療機器管理費用を削減したことを上司にアピールし、人員の増員やチェッカーの購入予算の確保に繋げることも重要です。

「使用者が原因で発生したトラブル」とは何か?

次に使用者が原因で発生したトラブルに関して説明します。このトラブルは単純に使用者の使用方法が間違っていたことで発生したトラブルです。

医療機器は、正しい使用方法で測定しなければ、正確な測定値を得ることは出来ません。

使用方法は取扱説明書に記載されていますが、使用者が医療機器の使用方法を理解しないまま医療機器を使用してしまい、トラブルとなることが多々ありました。

MEセンターで取扱説明書を要約した使用方法のマニュアルを作成し、医療者が簡単に使用方法を理解できるようにしたり、使用方法の講習会を企画して実施する等の対処を行っていました。

使用方法や使用手順は、医療機器の種類や、医療機器メーカーによって異なるため、医療機器の買い替えで、メーカーが変更となった場合や、同じメーカーでも前型式の機器がリニューアルされ使用手順が変わった場合には、よくこのトラブルが発生していました。

また、このトラブルの特徴は、使用者自身が医療機器の使用方法が間違っていたということを自覚していない場合もあり、使用者からは「医療機器がおかしい」「医療機器が誤作動した」と主張される場合もあります。その場合は、トラブルが本当に医療機器本体が原因で発生たしたのか、使用者の操作ミスだったのかを検証する必要があります。機器を長時間稼働させトラブルの再現性を確認したり、医療機器のログを調べたりします。

「医療機器本体が原因で発生したトラブル」とは何か?

最後に、医療機器本体が原因で発生したトラブルに関して説明します。これは医療機器本体の故障によって発生したトラブルです。機器のトラブルというと「医療機器の故障」をイメージされる方も非常に多いですが、全体のトラブルの1割程度しかありません。

制御基板の故障、電源部の故障、外装の破損、タッチパネルや操作パネルの故障等があります。

日本国内の薬機法では、医療機器の修理を行うためには、「修理業」の業許可を取得している必要があり、メーカーから講習を受けてオーバーホールを実施する場合を除き、臨床工学技士が医療機器の修理を行うことはありません。

薬機法上は「清掃・校正・消耗部品の交換」は修理ではなく保守点検であると定義されており、病院で勤務する臨床工学技士が行う業務範囲はこの範囲までとなります。

従って、このトラブルが発生した場合は、院内に代替機がないか。メーカーから代替機を借りられるか、いつまでに用意できるかを確認し、代替機と交換するという対応を行います。その後はメーカーから修理見積りをもらい、修理を行うかどうか。予算を確保できるか確認することになります。

電源が入らない、測定が出来ない等はっきりと故障していることが確認できる場合は分かりやすいですが、一見医療機器本体の故障と思っていても、原因をよく調べるとアクセサリー品や消耗品、消耗部品が原因だったということはよくあります。また、医療機器本体の故障と思って、メーカーに見積もり依頼を出した後に、現象が再現しない(原因がはっきりと分からない)ということもよくあります。メーカーに修理依頼を出す前に、院内で医療従事者から指摘された現象が再現するか。本当に医療機器本体の故障かを確認することをお勧めします。

弊社で行っている中古医療機器の販売事業のご紹介

弊社では販売する中古医療機器によって、院内で発生する医療機器のトラブルを予防するため、以下のようなサービスを展開しています。

  • 中古医療機器を使用するために必要なアクセサリー品、消耗部品、消耗品を補充して、セットで販売しています。商品が届いたその日から、すぐに使用することが出来ます。

2.機器本体、アクセサリー品、消耗部品、消耗品の清掃や消毒を行っています。

3.機器の動作確認を行い、行った内容を商品説明に記載しています。記載した内容と到着した中古品に差異がある場合は、返金保証しています。保証期間は5日間です。

4.動作確認は、医療機器専用の波形シュミレータやチェッカーを使用しています。

5.機器が動作している状態の写真を撮影して、商品の写真として掲載しています。使用者

の方は写真を見れば、製品が動作していることを確認できます。中古品は1点1点異

なるため、毎度、写真を撮り直しています

6.医療機器の使用方法が分かるように添付文書や取扱説明書をセットで販売しています。

よろしければ、どのような商品があるか覗いてみてください。お問い合わせからご質問して頂くことも可能です。

また、弊社では中古品の下取りや買取なども行っています。気軽にご連絡ください。