パルスオキシメータの測定精度に関して ディスプレイに測定値が表示されればそれでいい?

獣医師の皆さん・動物看護師の皆さんパルスオキシメータで測定された測定値の測定精度に疑問を持たれたことはありませんか?

今回は、測定精度に関してご説明致します。

測定精度とは「測定を行う際の正確さ」のことを言います。どのような測定器でも測定値に対しては誤差が生じます。誤差とは実際に得られた測定値が、本来の値からどれだけずれているかを表す量のことです。

この誤差が許容される範囲に収まっているかどうかによって、測定の正確さつまり、測定精度が評価されます。パルスオキシメータを例にすると、測定を行う際には、動物病院でパルスオキシメータを使用する場合、以下のような誤差が生じます。

生じる誤差の種類

 (1)測定する者(パルスオキシメータの使用者)が原因となって生じる誤差

 (2)測定される者(動物病院では犬や猫の個体特性)が原因となって生じる誤差

 (3)測定器自身(パルスオキシメータ)が原因となって生じる誤差

それぞれの誤差の評価方法に関して説明します

(1)測定する者(パルスオキシメータの使用者)が原因となって生じる誤差

(2)測定される者(動物病院では犬や猫の個体特性)が原因となって生じる誤差

上記の写真は、人用の検査用のパルスオキシメータを、猫の耳に取り付けて測定を行っている写真です。コロナ過にパルスオキシメータが普及し、動物用のパルスオキシメータが市場に少ないことから、上記のような写真がインターネットで散見されました。

このパルスオキシメータで測定された酸素飽和度は99%で、酸素飽和度の測定値から言うと十分に酸素化されていると判断できる数値になります。

獣医師や動物看護師の皆さんはこの測定値をどのように評価されるでしょうか?

測定値を信用して臨床に活用しますか?

酸素化の必要性はないし、正常値だと判断されるでしょうか?

ディスプレイには測定値が表示され、一見問題なく測定が出来ているように見えますが、

結論から言えば、測定精度の観点から、この測定値は全く信用が出来ません。

以下にその理由を説明します。

写真の測定値が信用できない理由

パルスオキシメータは測定原理から光を利用しています。外部からの光干渉や光の減衰を防止するために、パルスオキシメータの測定はセンサーと、測定部位を密着させる必要があります。写真に写っているパルスオキシメータは、人用であり、ンサーと人の指先が密着するような形状で設計されています。ペットの指先や耳は人の指先と形が大きく異なります。従って、センサーと測定部位の密着が不十分で、測定誤差が大きくなっている可能性があります。動物に対して使用するのであれば、動物の測定部位の形状に合ったクリップ型のセンサーを使用しないと、測定精度は保てません。

また、パルスオキシメータは、その測定原理から体毛や色素沈着がある部位、動いている部位を測定した場合に、測定不能となったり、測定誤差が大きくなるという弱点があります。

測定誤差が生じる要素として、体毛や色素沈着の色・位置・濃さ・毛の太さ・毛の長さ・毛の密度、測定した時の体動の程度等が挙げられます。これらの要素は、同じ個体であっても様々な条件で変化します。また、個体が異なると尚更、各要素が変化し、測定の度に測定誤差が変化し、それに伴って測定の度に測定値も変化するという状況が生じます。この状態は測定値の再現性が悪化している状態で、測定値は全く信用できません。

従って、測定者は測定誤差が少なく、測定誤差は常に一定している状態で、測定を行うことが望ましく、測定精度の悪化防止と、測定値の再現性の確保のために、測定部位の剃毛、測定部位の色素沈着の有無の確認、動物の保定による体動の抑制などの作業が必要となります。

写真は、動物に対して人の指先で測定するパルスオキシメータを使用していること、測定部位(耳)の剃毛を行っていないと推測できること、測定部位の色素沈着が避けられているか、体動がどの程度かを評価できない為、パルスオキシメータの測定値は信用できないと判断しました。

(3)測定器自身(パルスオキシメータ)が原因となって生じる誤差

測定器自身の誤差や測定器自身の測定精度は、測定器自身の性能によって大きく変化します。

そのため、人用の医療機器では、一定の測定精度を担保するために、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(以下、薬機法)」で、パルスオキシメータの測定精度や安全性などについての基準を定めています。人用のパルスオキシメータとして市場で販売を行うためには、その基準をクリアする必要があり、そのためには、求められる性能や仕様(要求事項)を満たさないといけません。

パルスオキシメータの測定精度や安全性等に関する要求事項は国際規格のISO 80601-2-61で定められています。日本国内においてはISO 80601-2-61に準じたJIS T 80601-2-61が制定されています。

つまり、人用の医療機器としてパルスオキシメータを市場で販売するためには、これらの規格の要求事項を満たすことが必要となり、これらの基準を満たすことで、測定器自身(パルスオキシメータ)が原因となって生じる誤差が許容値の範囲内であることが担保されています。

要求事項を満たすための臨床試験として、人を対象とした低酸素試験が行われます。

具体的は、血液検査によって得られた酸素飽和度:SaO2と、パルスオキシメータによって皮膚の上から測定された酸素飽和度:SpO2を統計的に比較することによって、測定精度の評価が行われます。シミュレータで測定した精度では 要求事項は満たせません。

この基準や要求事項は人用パルスオキシメータでは必須事項となっていますが、動物用パルスオキシメータに関しては任意事項となっています。しかしながら弊社では、動物用パルスオキシメータでも、人用パルスオキシメータの基準や要求事項に準拠することを目指し、臨床試験の準備を進めています。

弊社では、直腸で測定が出来る動物用パルスオキシメータを開発しました。直腸内は体毛や光干渉による影響を受けません。また直腸には密着性があり、小型や大型の動物に合わせてセンサーサイズを変える必要もありません。

また、剃毛や部位選定の手間を削減することが出来ます。

弊社のパルスオキシメータは、診察で使用することに特化しており、診察時の検温作業で、直腸温と同時に酸素飽和度と脈拍数を検査できます。

ご興味を持って頂けましたら、こちらから製品の詳細をご覧下さい。